『生きる力を支えるケア』刊行に寄せて

 「オン・ナーシング」創刊号から9回にわたって,当院・美須賀病院の取り組みや患者さんのよくなった様子を紹介してきました。連載が始まった当初から,院内では単行本化しようとの話が持ち上がっていました。あんなこともこんなこともと思い出しながら書きました。川嶋先生に美須賀病院に来ていただいてから11年。スタッフたちは,私が「て・あーて塾」で習ってきたオイルマッサージや,熱布バックケアを当たり前のように看護計画に取り入れ,ノーリフティングとともに定着させてくれました。日々の積み重ねですが,10年も経ったのかと感慨深くさえあります。始めた頃は,まったく写真や記録がなくて,書くことが苦手だった私たちでしたが,徐々に慣れてきました。自分の文章が活字になり,多くの人に読んでいただけることは喜びでもありました。「オン・ナーシング」がご縁で,長崎からお電話を頂き見学にも来てくださった方がいます。彼女とは同年代で看護の方向性が同じで,今や大切な友人です。彼女曰く「役員会で疲れて帰って,美須賀病院のケアを読んで元気が出た」と。

 川嶋先生が推進される「て・あーて」を取り入れ,患者さんがよくなり,ご家族の笑顔につながり,自分たちのやる気になっています。改めて「て・あーて」の素晴らしさと効果を感じます。「て・あーて」とは,ただ,オイルマッサージをするだけではありません。傍に居てコミュニケーションをはかる,聴く,摩る,観ると多くのことが含まれています。その実践の一部を記録に残す,本にする,そして本が各地へ飛んで行ってまた仲間が増える。そんなことを夢見ています。

 看護の科学新社の濱崎さんには短期間で進めていただきました。お蔭さまで素敵な表紙に包まれた私たちの本ができました。多くの人の手元に届くことを期待しています。

 私たち「チーム美須賀」にとっては,4冊目の本になりました。とても嬉しく出版記念講演会を開催することとしました。講師は恩師,川嶋みどり先生と窪田静先生。今回は国際ホテルで盛大に行います(6月2日開催)。200名もの参加者があり,関心の高さを感じています。出版記念に寄せて祝賀会的なことをしないので,講演会の資料にお祝いの言葉を寄せていただきました。どの方からのメッセージも涙が出るほど嬉しいものでした。有難いことです。

 最近,いろいろ講演依頼をいただくことが増えてきました。看護を何とかしようと頑張っている仲間がいるんだと勇気がでます。「て・あーて」は特別な技術を要しませんので,想いがあれば誰でも取り入れることができます。「看護をよくする会全国連絡会春のセミナー」に京都へ呼んでいただいた時のことです。会場から,「定年後に雇ってもらえますか? 今もやりがいを持って看護をしていますが,最後は美須賀のような病院で看護師人生を終えたいのです」と言っていただきました。とても嬉しくてすぐにスタッフに伝えました。スタッフたちも喜んでいました。

 以前は,看護師よりセラピストの方が患者さんの情報をたくさん得ていました。看護師よりもセラピストの方が患者さんと一緒にいる時間が長かったのです。それが,「て・あーて」に取り組むようになり,看護師が得る情報量が増えましたし,クレームも減ったのです。「て・あーて」導入と並行して労働環境改善・腰痛予防にも取り組んだことが,成功の鍵だったようにも思います。同じ京都の会場で,「て・あーて」の精神が看護師にあるから,クレームが減ったように24時間継続したケアができているのでしょうね,とも言っていただきました。そして,自分たちの体の負担が減って,気持ちに余裕ができ看護師の全身に,「て・あーて」の精神が宿り,患者さんの安楽・回復過程を助けるということが24時間切れ目なくケアされていることに気づきました。「て・あーて」を含めた川嶋先生の教えが私たち看護師のありようを育ててくださったように感じています。ぜひ,「チーム美須賀」の歩みを読んでください。そして,全国に仲間が増えますよう願っております。