病院でお茶を配らなくなった日

12月1日で配茶廃止

 2023年10月27日,病院に労働組合として秋年末の要求書を提出しました。その時,病院がこれまで行っていた配茶をやめると言ってきました。そのため病棟の各フロアに自販機を設置したとのこと。「以前から知らせてあり,その準備もしている」と言われました。

配茶の必要性について

 私の勤務する病院では,朝昼晩,大きなヤカンでお茶を沸かし配膳時に配っていました。以前,保健所に指摘されるからと監査の日だけヤカンが隠されたというエピソードもあり,組合では,保健所が指摘しているなら,給食のお膳にお茶を載せて提供することを要求にしてきましたが放置されてきました。

 超高齢社会,高度救命救急センターの看板を掲げている病院です。入院患者さんの顔が浮かびました。私の勤務する病棟では,循環器内科や腎臓内科の方が入院,1日の水分量が厳しく決められている患者さんがおられます。高齢の方,独居の方,認知症の方,寝たきりの方,自分でお茶を購入できない,管理できない方もおられます。自販機設置だけで済む問題ではありません。

11月8日秋年末第一回目の団体交渉

 病院が配茶を廃止する理由は3つ。①安全面,②衛生面,③業務負担軽減,でした。

 安全面では,異物混入など。衛生面では,夕方に作ったお茶を夜中までおいておくこと。業務負担軽減では,配茶がなくなることで看護師や看護助手の業務軽減につながる,と。廃止による問題点を確認しましたが認識されていませんでした。

 「お茶は自分で準備して自己管理してもらいます」「自分でできない人は水です」と言っていました。

11月29日第二回目団体交渉

 廃止される日が目前に迫っている中で,病院の回答は「1週間毎に評価して,問題点が出てきたら改善する」というものでした。

配茶廃止前日

 団体交渉の翌日,11月30日は準夜勤でした。病棟では明日からのお茶の管理方法について喧々諤々話し合いがされていました。「夕食で配るこのお茶が最後なんやな」と思うとなんともいえない気分。患者さんは「せち辛い世の中になったな。しょうがないな」という反応。翌日に備えて,何人かの床頭台にはペットボトルが並んでいました。

たかが配茶されど配茶

 この原稿を書いているのは,12月4日。深夜勤でした。認知機能の低下がみられる患者さんが朝の配膳時に「お茶をくれ」と言われていました。お金を持っておられず,お茶は買わないといけないこと,水ならありますと伝えると,「水なんか飲めるか」と怒っておられました。

 以前,夜間せん妄の患者さんに温かいお茶を渡して対応している間に落ち着いてこられた,という経験があります。食事とともに飲む温かいお茶がもたらす効能,ホッとする時間,そういうものの大切さを守りたい,配茶も看護の1つではないかと思います。たかが配茶,されど配茶なのです。(2023年 「オン・ナーシング」第9号掲載)

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