新刊紹介

ケアのコーディネーションをめぐって

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フランスと日本の研究者による協働の調査

本書『ケアのプロフェッショナルの空間』は,ケアのプロフェッショナルのコーディネーションを中心として,フランスと日本の社会的コンテクストにおいて国際比較を行なった結果である。本書の国際比較は,21世紀はじめから10年以上にわたって日仏の研究者の協働により実施された調査に依拠し,以下のフランスと日本の6名の研究者の協働の作業を,山下りえ子(東洋大学法学部教授)が編集した。

マリーズ・ブーロンニュ=ガルサン(元パリ公立病院),フィリップ・モッセ(フランス労働経済社会学研究所),コリーヌ・グルニエ(ケッジ・ビジネススクール),原山 哲(東洋大学),川崎つま子(東京医科歯科大学病院・病院長補佐・患者相談室長),山下りえ子(東洋大学)

離脱と発言:空間の構築

考察の対象となる調査は,2008年の病院看護師の調査,2011年の訪問看護師の調査,そして,2019年の高度実践看護師の調査である(3章,4章)。2008年の調査と2011年の調査では,ケアのプロフェッショナルの空間の構築を,空間からの離脱,発言として考察した。フランスの看護師は,病院だけでなく,自由開業の場へと離脱し,多様なケアのネットワークで発言の機会がある。けれども,日本の看護師の場合は,家族の事情等により病院から離脱し,診療所などでの勤務に復帰したとしても,発言は可能となるのだろうか(A. O. Hirschman, Exit, Voice, and Loyality, 1970, Cambridge et al.)。

コーディネーション:高度実践看護師(advanced practice nurse)の役割

2019年の調査においては,フランスでは主として高度実践看護師の教育期間の看護師,また,それをめざす看護師を,日本では認定看護師,専門看護師を対象として行なった。フランスでは,パリだけでなく地方の都市においても高度実践看護師の教育が実施されているが,日本の場合,東京の大都市圏の大病院に集中している。フランスにおいては,ケアを基軸に,キュアとケアとのコーディネーションへの動機づけがみられるのに対して,日本では,認定看護師,専門看護師の多くが管理職につき,コーディネーションへの動機づけの実現を困難にしているようである。

病院中心主義を問う

フランスでは,キュアとケアの病院中心主義(hospitalo-centrisme)が問われてきた(5章)。それゆえにこそ,訪問看護師の活動は,日本より顕著である,といえる。一例として,南フランスのニースを中心とする地域では,キュアとケアとの境界をとりはずし,医師,看護師,介護士のプロフェッショナルの協働を試みている(序論)。

今日,COVID-19への対応において,病床不足とその解消が課題となっている。現場での知見の蓄積を今後も収取分析しながら,私たちに新しい発想での提案は可能だろうか?(原山 哲,山下りえ子)

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